皐月十八日・二〇一〇 #570

港に着いたのは杜亜を発ってより周天に月の二度巡った頃のこと。船を探すが、そこの近くを通ると云う者はない。聞けば、旧くより禁足地とされて久しい由。ようやっとまだ近い航路の渡りを取りつけたのは、じつにもうひと月の後であった。船は禁島の南西、南溟の塔都を目指すと云う。

直接の上陸は叶わないけれど、その代わりもっと大事な邂逅があることをふたりはまだ知らない。霧の時代よりも古い塔の都へ、吸い寄せられるように。