2010-09-01から1ヶ月間の記事一覧

葉月八日・二〇一〇 #656

廃棄された塔。沈み行く陽を切り取って、黒々と屹立する。かつて星の海まで届いたそれはある日、前触れ一つなく地に墜ちた。大地を海を抉り穿つ鞭と化したそれが蹂躙の手を止めた時、空は鎖された。最早幾年が巡ったか知れぬ。還ることも能わぬ宙の同胞は、…

葉月八日・二◯一◯ #655

壁のカレンダーに○が増えている。出掛けてるうちに帰ってたのだな、と他に何の書き置きもない辺りがきみらしくはある。あともう少し、とりあえずは買い物に行こう。待つのは、いつだって慣れている。カウントダウン、4、3、2、1……0。今度はしばらく、一…

葉月八日・二◯一◯ #654

”「綺麗、ですよ」咲き誇り見蕩れるうちに闇に紛れる、「貴女みたいに」。どこか不満そうな上目遣いに、慌てて言葉を探す。「空の花火は消えるけど、消えない光なら多分見つけました」” …… #twnovel タグを付けようか迷うが、あ、もうこの時点で付いてるんだ…

葉月七日・二○一○ #653

「気が向いたら開けてみれば」と女は箱を置いていった。何が入っているのやら、開けてみれば、藁と黒い……火薬か。僅かに虫の声さえ聞こえ出した夜、火を点ける。虹色の線香花火と云うには豪勢な光に浮かぶ思い出には、何故か居た筈のない貴女が居た。「夏の…