葉月八日・二〇一〇 #656

廃棄された塔。沈み行く陽を切り取って、黒々と屹立する。かつて星の海まで届いたそれはある日、前触れ一つなく地に墜ちた。大地を海を抉り穿つ鞭と化したそれが蹂躙の手を止めた時、空は鎖された。最早幾年が巡ったか知れぬ。還ることも能わぬ宙の同胞は、今も生きて在るだろうか。

軌道エレベータの崩落事故。