神無月十六日・二〇〇九 #193

少年が消えた、と塔の街では騒ぎになった。一週ほどの後、彼らは父母の心配をよそに帰ってきた。「軌道塔を上ってきた」と誇らしげに語るのだ。噂は街中を駆け巡り、男どもは少年をそそのかそうと必死だ。無論、たかが大目玉で懲りる歳ではない。母は怒るが父はどこか愉しそうである

#131と舞台は同じ。大きく動こうとする時代の、ほんの少しだけ前の。